「宿題やったの?」
「早く宿題しなさい!」
「いつになったら始めるの?」
小学生の子どもがいると、毎日のようにこんな声かけをしている方もいるのではないでしょうか。
学校から帰ってきてすぐだらだら。
おやつを食べても宿題を始めない。
「あとでやる」と言ったまま、気づけば夕方。
親としては、「宿題くらい早くやればいいのに…」と思ってしまいますよね。
私自身、小学校教員として子どもたちを見たり、相談を受けたりしてきましたが、宿題をなかなかやらない子=怠けている子、というわけではありません。
宿題を始められない理由は、子どもによってさまざまです。
クラスでよく宿題を忘れてくる子に話を聞くと、「やろうとは思ってるけど、いざやるとなるとどこからやっていいかわからない」「内容が分からないから嫌になってしまう」「時間がない」など、理由は本当に様々です。
この記事では、元小学校教員として子どもたちを見てきた経験から、
- 小学生が宿題をやらない原因
- 宿題を始めやすくするための工夫
- 親がやってしまいがちなNG対応
- 宿題を自分からできるようになるために大切なこと
について紹介します。
小学生が宿題をやらないのは「やる気がない」から?
まず知っておきたいのは、宿題をやらない理由は「やる気がない」だけではないということです。
学校で子どもたちを見ていると、「宿題を忘れました」という子の中にも、さまざまなタイプがいました。
宿題そのものを嫌がっている子もいれば、やらなければいけないことは分かっているけれど、始めるまでに時間がかかる子もいます。
また、宿題の内容が難しくて手をつけられない子もいます。
家庭で「どうして宿題をやらないの?」と考える前に、「宿題の何が嫌なのかな?」と考えてみると、原因が見つかりやすくなります。
小学生が宿題をやらない7つの原因と対処法
原因が様々なので、それぞれに合わせた対応ができます。
すべてを一度に変える必要はありません。
子どもの様子を見ながら、できそうなものから試してみてください。
①学校で疲れている
小学生は、大人が思っている以上に疲れています。
朝早くから授業を受けるだけではありません。
友達と過ごしたり、体育で体を動かしたり、先生の話を聞いたりと、集団生活の中では体力気力をたくさん使っています。
また、通学距離が長かったり、人間関係で悩んでいたり、行事があったりと、子どもによって疲れている理由も様々です。
そのため、帰宅してすぐに、「宿題やりなさい!」と言われても、なかなか気持ちを切り替えられない子もいます。
特に低学年では、学校生活そのものが大きなエネルギーを使う活動です。
対処法
「帰宅したらすぐ宿題」が合わない場合は、少し休憩して子どもに合った時間に始める方法があります。
「学校から帰ったらすぐ宿題」が合う子もいれば、「少し休んでから宿題」の方が合う子もいます。
学校で疲れている様子なら、
帰宅
↓
手洗い・おやつ
↓
少し休憩
↓
宿題
という流れを試してみてもよいでしょう。
ただし、休憩が長くなりすぎると、今度は宿題を始めるのが嫌になってしまうこともあります。
「おやつを食べたら始める」など、家庭で分かりやすいルールを決めておくと続けやすくなります。
②宿題が難しくて分からない
宿題をやらないのではなく、できなくて止まっている場合もあります。
例えば算数のプリントを前にして、鉛筆を持ったまま動かない。
漢字ドリルを開いているけれど、何も書いていない。
こうした場合、単純に「やる気がない」とは言えません。
学校でも、課題が難しくなると急に手が止まってしまう子がいました。
対処法
難しくて取り組むことができない場合は、一緒に寄り添ってあげるとうまくいくことがあります。
学校と違い、家庭では周りのスピードに合わせる必要がないので、「早くやりなさい」と急かす前に「どこか分からないところがある?」と確認してみるのも一つの方法です。
③遊びの途中ですぐに切り替えられない
学校から帰ってきて、ゲームやテレビ、友達との遊びを始める。
そして、「宿題の時間だよ」と言われても、「あと5分!」「これが終わったら!」となかなかやめられない。
これも珍しいことではありません。
特に子どもが夢中になっているものから、突然宿題へ切り替えるのは簡単ではありません。
対処法
「宿題しなさい」と突然言うより、「あと10分で宿題にしよう」「このゲームが終わったら宿題ね」など、切り替えるための予告をすると動きやすくなる子もいます。
学校でも学習の見通しができるように「ノートを書く時間を3分とるよ」「友達と1分間だけ相談しよう」と、あらかじめ時間を伝えることが多いです。
そうすることで次の行動が意識でき、切り替えがしやすくなります。
④量や種類が多い
大人から見ると、「プリント1枚だけ」と思っていても、子どもにとっては大きな負担に感じることがあります。
特に、
- 算数プリント
- 漢字練習
- 音読
- 計算カード
- 翌日の準備
など、やることが複数あると、気持ちが重くなってしまう子もいます。
私の経験では、学年×10分で終わるくらいの量を宿題にしていることが多くなっていますが、学校や地域、学級によって宿題の量や内容は異なります。
複数の課題が出ると、一つ一つは量が多いわけではなくてもどれから手を付けたら良いのかわからなくなって手が止まってしまうことがあります。
対処法
そんなときは、最初から全部終わらせようとするのではなく、「まず算数だけやろう」のように、一つずつ区切ってみましょう。
そもそも、勉強の準備にたどり着けない場合は「まずランドセルから宿題を出そう」「算数のプリントを机に置こう」など、最初の一歩を具体的に伝えるようにしてみましょう。
宿題を始めることが苦手な子ほど、この方法が合う場合があります。
それでも、あまりにも負担が多いと感じる場合には、担任の先生に相談してみるのもおすすめです。
担任は家庭での様子をすべて把握することはできないので、困っていることは伝えてもらった方が対処できます。
また、一気に「全部終わらせよう」と考えると大変です。
そこで、「まず5問」「ここまで終わったら休憩」というように区切ってみましょう。
特に宿題の量が多く感じられている子には効果的です。
⑤何から始めればいいのか分からない
前項と重複する部分もありますが、宿題が複数あると「どれからやろう?」と考えているうちに時間が過ぎてしまうことがあります。
特に低学年では、自分で学習の順番を決めること自体がまだ難しい場合があります。
対処法
そんなときは、「今日は何が宿題?」と一緒に確認しましょう。
そして「じゃあ、まず漢字からやろうか」と最初の一歩を決めてあげるとよいでしょう。
宿題の中に、「これはすぐできる」というものがあれば、最初に取り組ませる方法もあります。
例えば、
音読
↓
漢字を書く
↓
算数プリント
などです。
最初に「できた!」と思えると、その後の学習にも入りやすくなります。
慣れてきたら「何からやる?」と尋ねて決めていくことで、徐々に自分で取り組めるようになります。
学年が上がると、ホワイトボードや付箋などに書いておくのもおすすめです。
例えば、
□ 算数プリント
□ 漢字
□ 音読
□ 明日の準備
のようにしておけば、終わったものを自分でチェックできます。
「親に言われてやる」のではなく、自分で確認して進める練習にもなります。
⑥宿題そのものが嫌になっている
毎日「宿題をやりなさい」と注意され続けると、宿題そのものに嫌なイメージを持ってしまうことがあります。
宿題と聞くだけで、「また怒られる」「面倒くさい」という気持ちになってしまう子もいます。
子どもが宿題をしていると、親としてはつい気になります。
「そこ違うよ」「字が汚いよ」「ちゃんと問題読んだ?」など、次々に口を出してしまうこともあります。
しかし、すべてを見られていると、子どもによっては「自分でやっている」という感覚を持ちにくくなったり、やりたくないと思ってしまったりします。
対処法
こうした場合は、宿題の内容だけでなく、宿題をするときの親子のやり取りにも目を向けてみましょう。
最初だけ一緒にすることを確認して、「ここまでできたら見せてね」と任せてみる方法もあります。
⑦「できた!」という経験が少ない
勉強が苦手な子の場合、
「宿題をする」
↓
「分からない・できない」
↓
「怒られる」
↓
「嫌になる」
という流れになってしまっていることがあります。
こうなると、宿題を始めること自体が嫌になってしまいます。
対処法
「宿題をやるのは当たり前」と思ってしまいますが、なかなか始められなかった子が自分から机に向かったのであれば、それは一つの成長です。
「今日は自分から始められたね」「昨日より早く終わったね」「最後までできたね」など、具体的に良かった点を伝えてみましょう。
ただ「えらいね」と言うよりも、何ができたのかを伝えることがポイントです。
まずは簡単な問題から始めて、「できた!」という経験を作ることも大切です。
褒めてあげられるような課題を設定するのも一つの手です。
元小学校教員が感じた「宿題を自分からできる子」の特徴
学校で子どもたちを見ていると、宿題を毎日きちんと提出する子にもさまざまなタイプがいました。
個人面談などで保護者の方の話を聞いて印象的だったのは、最初から何でも一人で完璧にできる子ばかりではなかったことです。
「宿題をやる時間」が決まっていたり、
「帰ったらまず宿題」という習慣ができていたり、
「分からなかったら先生に聞けばいい」と思えていたり。
つまり、宿題をすることが特別なイベントではなく、毎日の生活の一部になっている子が多かったように感じます。
家庭でも、「毎日やる気を出させる」ことより、「自然と始められる流れを作る」ことを目指してみるとよいでしょう。
学校でも1年生のうちに、朝登校したら「朝の用意→宿題提出→連絡帳を書く」というようにルーティーンを作ってしまいます。
そうすることでお互いに、負担なくスムーズに行うことができます。
宿題をやらない子に「ご褒美」はあり?
「宿題をやったらゲームしていいよ」という方法を使っている家庭もあると思います。
ご褒美そのものが悪いわけではありません。
ただし、「ご褒美がないと宿題をしない」という状態になってしまうと、長期的には少し気になるところです。
最初は「宿題が終わったら好きなことをする」という生活の流れを作るために利用し、少しずつ自分で宿題を始められるようにしていく方法もあります。
宿題をやらないとき、親がやってはいけないこと
「なんでできないの?」と責め続ける
宿題ができていないときに理由を聞くことは大切ですが、責め続けると子どもが「宿題=怒られるもの」と感じてしまうことがあります。
「どこが嫌だった?」「何からならできそう?」と、原因を探す声かけに変えてみましょう。
きょうだいや友達と比較する
「お姉ちゃんはちゃんとやっているよ」「○○ちゃんはもう終わったって」という比較は、やる気につながるとは限りません。
むしろ、「自分はできない」という気持ちを強くしてしまうことがあります。
親が全部手伝ってしまう
宿題が進まないと、親が答えを教えたくなることもあります。
もちろん分からないところを教えることは必要ですが、最初から最後まで親がやってしまうと、子ども自身が考える機会が減ってしまいます。
「どこまでは分かる?」「教科書のどこにヒントがありそう?」と、考える方向を示してあげるのがおすすめです。
宿題をする習慣はすぐには身につかない
「今日から自分で宿題をやってね」と言っただけで、急に一人でできるようになるわけではありません。
最初は、「宿題を出そう」「何からやる?」「じゃあ、これを終わらせよう」と親がサポートする必要がある場合もあります。
そして少しずつ、「今日は何をするんだっけ?」「自分で確認してみよう」と、子どもに任せる部分を増やしていきます。
親が手を出す量を少しずつ減らしていくことが、自分で宿題をする習慣につながります。
それでも宿題をやらない場合は?
いろいろな工夫をしても、宿題をなかなかやらないことがあります。
そんなときは、
- 学校でも宿題に取り組めているか
- 学習内容が難しすぎないか
- 宿題の量が負担になっていないか
- 学校生活で疲れていないか
- 友達関係などで悩んでいないか
なども確認してみましょう。
家庭だけで解決しようとせず、必要であれば担任の先生に、「家では宿題を始めるまでにかなり時間がかかっています。学校ではどうでしょうか?」と聞いてみるのも一つの方法です。
家庭と学校の様子を比べることで、原因が見えてくることがあります。
「宿題をやらない」より「始められない」に注目してみよう
宿題をしない子を見ていると、「どうしてやらないの?」と考えてしまいがちです。
でも、「宿題をやらない」と「宿題を始めるのが難しい」では、必要な支援が違います。
「宿題をやりなさい」と言われても動けない子には、最初の一歩を小さくしてあげる。
「まずランドセルから宿題を出す」「算数のプリントを机に置く」「1問だけ解く」それだけでも構いません。
「始められた」という経験を積み重ねることで、少しずつ自分で動けるようになる子もいます。
まとめ|「宿題をやらない」には理由があります
小学生が宿題をやらないとき、「やる気がない」「怠けている」と決めつける必要はありません。
学校で子どもたちを見てきた経験からも、
- 疲れている
- 問題が難しい
- 宿題が多く感じる
- 遊びから切り替えられない
- 何から始めればいいか分からない
- 宿題そのものが嫌になっている
- 「できた」という経験が少ない
など、さまざまな理由があると感じます。
家庭では、
「宿題しなさい」と言い続けるより、最初の一歩を具体的にする。
まずはここから始めてみてください。
「ランドセルから宿題を出す」
「プリントを机に置く」
「1問だけやってみる」
という小さな行動からでも大丈夫です。
そして、少しずつ親が手伝う量を減らし、子ども自身が「そろそろ宿題をやろう」と動ける習慣を作っていきましょう。
毎日完璧にできなくても大丈夫です。
宿題をすることに苦戦している今も、子どもが自分で学習するための練習期間なのかもしれません。


